安心を伝える食材の絵文字フードピクト


 

前々回の記事では「世界の食トレンドと求められる3つの視点」を、前回の記事では「多様化する食へのニーズ|対応が遅れる日本と海外の事例」について紹介しました。今回の記事では、多様化する食へのニーズに対応するための具体的な方法について紹介します。

 

諸外国に比べると多言語による情報提供や、多様化する食へのニーズに配慮した情報やサービスの提供が遅れている日本では、今後どのように対応するのが良いでしょうか?


観光庁は食の多様性対応について、お客様が食べられるかどうかをご自身で判断できるように、多言語やピクトグラム(絵文字)を使って情報を開示する方法を勧めており、その具体的なツールのひとつとしてフードピクトの利用が広がっています。


フードピクトとは、料理や食品に含まれる食材を可視化するピクトグラムです。世界共通のデザインとして使用されている非常口のピクトグラムと同様に、ISO(国際標準化機構)とJIS(日本産業規格)のピクトグラム制作ルールに準拠し、世界1,500名への理解度・視認性・必要品目に関する国際調査から開発されました。


どのような国や文化の人にも伝わるようにデザインされたフードピクト


たとえば、乳製品のピクトグラムは最初、牧場で使う集乳缶をデザインしましたが、世界1,500名に調査を行ったところ理解度は77%と低く、酪農がない国や地域の人には意味が通じないことがわかりました。


続いて牛乳パックにデザインを変更しましたが、アジアや北米では牛乳はボトルで販売されている国が多く、理解度は85%に留まりました。


最終的には、古い時代から流通に使用されていた牛乳瓶のデザインに変更することで理解度は98%となり、言葉だけではなく文化や地域の違いも考慮したデザインに仕上がりました。


また飲食店のメニューや食品パッケージに馴染むように色合いを工夫し、色の見え方の違いに配慮したカラー・ユニバーサル・デザインの考え方も取り入れられています。


現在、フードピクトは、G20大阪サミットやミラノ万博などの国内外の主要なコンベンションをはじめ、成田・羽田・関西の国際空港、全国100社1,600店を超えるホテルや飲食店、食品パッケージで利用されています。


(出典:BS朝日「Fresh Faces」2021年1月30日放送)




また、フードピクトは災害の分野にも広がっています。2011年の東日本大震災発生時、避難所に集まった日本語がわからない外国人や食物アレルギーがある人に対する情報提供とニーズ把握に苦労して、必要な支援が届かないという事例が発生しました。


この反省を活かし、ピクトグラムと多言語による避難者登録カードや指さしボードを、総務省国際室や自治体国際化協会などと協力して開発し、全国の災害時避難所への配備が進んでいます。




さらに近年では、学校の給食献立表や教科書にも掲載され、日本生まれの新しい食品表示ツールとして広がりを見せています。




日本では食物アレルギーの原材料管理に取り組んでいる飲食店は多いものの、メニューブックには表示していない事例や、表示をしていても日本語のみになっている事例が多く見られます。


世界の食のトレンドを捉えながら、今のうちにアフターコロナの需要回復を見据え、多様化する食へのニーズに対応する準備を進めておくのはいかがでしょうか。



 

フードピクトでは、全国の宿泊施設や飲食店を対象にした講演や研修、自治体や観光協会を対象にしたファムトリップの参加やコンサルティングを提供をしています。ご相談・ご依頼は「お問合せ」より気軽にお寄せください。


(本記事は「月刊クリンネス」2022年3月号の巻頭特集に寄稿した内容をもとに、寄稿では割愛した事例を追加して再構成しています)