【万博レポート①】美味しさの選択肢を広げるグルテンフリーラーメン|ケンミン食品株式会社
- 株式会社フードピクト
- 6 日前
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更新日:6 日前
フードピクトは、2025年4月に開幕した大阪・関西万博の運営参加サプライヤーとして、料理や食品に含まれる食材を視覚的に伝えるフードピクトを会場内の飲食施設に提供しています。2025年5月現在、約80カ所へ導入されています。
万博会場内で、未来志向の食を取り扱う飲食エリア「EARTH TABLE~未来食堂~」に出店している「GF RAMEN LAB 大阪・関西万博店」(ジーエフ・ラーメン・ラボ)でも、フードピクトをご利用いただいています。こちらの店舗は、米粉から作られるビーフンを主力商品とするケンミン食品株式会社が、2020年より取り組むグルテンフリーラーメン専門店「GF RAMEN LAB」初の常設店です。
同社は、1950年に創業。「健康を皆さまに提供する」という理念のもと、安心・安全で美味しいことはもちろん、時代の変化に合わせ、グルテンフリー、アレルギー対応などの食の多様性に配慮した商品を提供しています。フードピクトと同じ神戸市に本社を構えられ、看板商品「ケンミン焼ビーフン」は地元民のソウルフードとしても愛されている、神戸を代表する食品メーカー。
フードピクトと同じ「食の多様性」という領域に取り組む田中様・三浦様に、フードピクト代表・菊池が、大阪・関西万博に関する取組みと今後の展望を伺ってきました。
― 大阪・関西万博へ出店することとなった経緯やフードピクトを採用頂いた理由をお聞かせいただけますか。
取締役会長・高村一成が、中学生のときに体験した1970年の大阪万博が強く印象に残っており、いつか万博に関わりたい、という思いを持っていました。今回の大阪・関西万博の開催が決まってからは、社内で協力して情報収集を行い、第1次募集に応募したのですが、実はそのときは採用されなかったんです。第2次募集で、出店エリアの「未来志向」というコンセプトに合わせて、弊社が2020年からアメリカでラーメン店を営む「TSURUMEN」店主・大西益夫さんと共同で開発してきたグルテンフリーラーメンブランド「GF RAMEN LAB」で応募し、念願の出店が叶うこととなりました。
「GF RAMEN LAB」はこれまで通販などを中心に展開してきたので、正直なところ当初は実店舗を持つことの不安が大きかったです。でも、私共の取り組みが大阪・関西万博で求められている「未来志向」というコンセプトとマッチしたのだと思って、なんとしても成功させる、という思いで開幕まで取り組んできました。
フードピクトを利用したのは、出店者向けの説明会で菊池さんが紹介されている様子を見て、ピクトグラム自体が見やすくて分かりやすい、ということが大きかったですね。ピクトグラムの「色」にもこだわられていると聞いて、そういったところもよいなと思いました。あと、弊社と同じ神戸市の会社だというのも理由のひとつになりました。

― 開幕して約1か月以上が経ちましたが、お客さまや従業員の方からの反応はいかがでしょうか。
日によっては、海外のお客様が8割くらいを占めるような日もあって、びっくりしました。現状、日本の方よりも海外の方の方が、グルテンフリーを認知したり、意識されているように思います。海外の方は「GF(ジーエフ)」という言い方で意味が通じますし、当店がグルテンフリー対応ということを理由に選んでいていただいている方が多いようです。
ピクトグラムを表示しているメニューに関しては、お客様からの問い合わせなどは特にありません。弊社のメニューは、色使いなど比較的派手だと思うのですが、フードピクトもデザイン的に埋もれることなく、見やすいなという印象です。問い合わせなどがないということは、特に問題なくお客様に伝わっているということかと思います。
弊社が主で扱っている商品のパッケージでも、文字情報は書こうと思えばいくらでも書けるのですが、視覚的に「見て分かりやすい」というのは安心して食べるにあたって、大事なことですよね。

また大阪・関西万博の現場は、従業員にとっても、食の多様性を目の当たりにできるよい機会になっています。海外のお客様でにぎわう店内を実際に目にすると、「これが食の多様性ということか」と実感しますよね。私共は、日頃から「美味しくて、安心できる食を提供する」ことを大切に仕事していますが、従業員が食の多様性の大切さを身をもって感じることで、より誇りを持って仕事に取り組むことにもつながるのではないかと思います。
私自身の経験でも、ニューヨークから来られたお客様がスマホの画面を見せながら「この店はニューヨークに出店するべきだ。絶対に成功する!」と、わざわざ翻訳アプリを使って伝えてくださったことがありました。また、小麦アレルギーを持つお子さまのお母さまが、「子どもが人生で初めてラーメンを食べられた」と喜んでおられる様子を見て、非常に嬉しい気持ちになったこともあります。今回の出店を通して食の多様性を実感して、私達が仕事を通して社会に貢献できることがまだまだあるな、と感じています。
― フードピクトは「食の多様性への対応」を大阪・関西万博のレガシーにしていきたいという思いで取り組んでいます。貴社の今後の展望をお聞かせいただけますか。
外食事業での野望としては、大阪・関西万博後、常設の実店舗を開きたいという思いを持っています。まだ開幕して1か月ほどですが、実際にお客様から店舗を出してほしいというご要望もありますし、万博で聞いたご意見や培ったノウハウをレガシーとして活かしていきたいと思います。そのとき、「”美味しいラーメン屋”が、フタを開けてみればグルテンフリーだった」という形で展開ができるのが理想ですね。グルテンフリーだから食べるのではなくて、美味しいから食べる、というのはとても大切なポイントです。
実は今回の出店では、醤油やトッピングの具材など、代表取締役社長・高村祐輝の発案で、「せっかく神戸から出店する機会だから、神戸や兵庫の美味しいものを伝えたい」と、様々な企業へお声がけをして、美味しさにこだわって食材を選びました。グルテンフリー対応はもちろんですが、「作り手の分かる、神戸・兵庫・関西の美味しいものを発信しよう」という思いも持って取り組んでいます。
また、グルテンフリーラーメンは認知がまだまだ低いこともあり、現時点ではこれからというマーケットだと思います。今後、アレルギーで小麦が食べられない方だけでなく、健康志向でたまにグルテンフリーの食事を摂るといった方も含めて、美味しく食べ続けるための選択肢を作っていくことが、以前からグルテンフリーの食材を取り扱ってきた企業として出来ることではないかと思っています。

神戸市民なら多くの人が親しみを持っている老舗の「ケンミンさん」。「ビーフンをはじめとするアジアの優れた食と食文化を、日本の食卓に広めていきたい」という思いのもと、長年培ってきた米粉を使った製造技術を活かして、時代の要請に応えながら、何よりも「美味しさ」を大切に商品づくりをされている姿勢が印象的でした。
「食の多様性対応」とは、アレルギーなどの食制限を持つひとだけへ向けたものではなく、当事者を含め、誰もが安心して健やかに食を楽しみ続けられる環境を提供することなのだと、改めて感じさせてくださった今回のインタビュー。
フードピクトは、共鳴する思いを持った企業の皆さまと共に、大阪・関西万博を契機とした食の多様性対応のレガシーづくりに取り組んでいきたいと思います。
取材にご協力いただいたケンミン食品株式会社様、ありがとうございました。
取材日:2025年5月23日
インタビュアー:(株)フードピクト 菊池 信孝
ディレクター:佐久間 文恵
ライター:臼井 綾香
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